コミックマーケット94アフターレポート


会場
東京国際展示場東京ビッグサイト
全館

会期
2018年8月10日(金)〜12日(日)

サークル数
参加サークル数 3万5千


入場者数
10日(金) 16万人
11日(土) 16万人
12日(日) 21万人


更衣室登録数
 男性女性
10日(金)1,550人4,377人
11日(土)2,167人5,092人
12日(日)2,080人3,186人


コミケット公式発行物
コミックマーケット94カタログ(表紙、あおいれびん)
コミケットプレス48(表紙、天野英)
紙袋(大)POKImari・(小)にゃごしま


出展企業数
165社


マスコミ取材
 コミックマーケット94取材申込一覧

(2018年8月28日データ部分公開)



 大変な猛暑、開催直前の台風の接近と、極端な天候による開催への影響が心配された夏コミ。企業ブースの深夜からの設営に若干の支障は出つつも、台風は足早に通り過ぎていきましたが、交通機関の乱れもあり、1日目は東京に来ることができなかった参加者の方も少なからずいたようです。
 暑さも決して優しくはなかったですが、ホールの天井に白い霞状のものが発生するいわゆる「コミケ雲」が出現することもなく、7月の酷暑に比べればずいぶんと和らいだ3日間(設営日含めて4日間)となりました。3日間の来場者数はのべ53万人と、雨に祟られた昨夏の50万人よりも増えています。開催期間中は3日目の開場直前に小雨がぱらついた程度で、2日目夕方の宅配便の発送受付と印刷会社搬入、3日目朝の宅配便受渡しを念のため雨シフトで運用したものの、天候が大きく崩れることは幸いにしてありませんでした。開催終了翌日の月曜日午後になって東京はゲリラ豪雨に見舞われたこともあり、相変わらず色々な面でコミケットは天候の引きが強いようです。

 体調を崩され、場外救護のテントで休憩したり、救護室で休まれたりした方もいらっしゃいましたが、2013年夏の暑さを教訓に、2014年夏のコミケット86より、東の救護室を東4ホールの主催者事務室から約2倍広い東1ホールのそれへ場所を移したこともあり、充分対応が可能で大きな混乱もありませんでした。こうした準備会の現場対応もさることながら、事前から当日にかけての、カタログ、Webサイト、Twitterを使った参加者の皆さんへの熱中症対策の啓蒙も功を奏したようです。主に海外参加者向けに情報提供をしているFacebookでも、英語、韓国語、中国語(繁体・簡体)での熱中症対策のページを今回から作りましたが、こちらも好評だったようです。今回、暑さにより体調を崩された方は5年前の夏に比べ大幅に少なく、真夏の大規模イベントとしては大変低い割合となっています。これも、参加者の皆さんひとりひとりの自衛と準備が、安全な運営に結び付いたと言えるでしょう。
 同人誌即売会としてではなく、こうした真夏の大規模イベントのひとつとして熱中症と結びつけられて報じられることも多い夏のコミケットですが、プライバシーへの配慮や救護の妨げとなるため、救護室や体調を崩された方への取材はお断りしています。事件や事故を報じるのもマスコミの仕事であると理解してはいますが、「絵になる」ことを優先して、熱中症で倒れる方を待ち構えるような取材や、人が流れてくる導線正面での撮影、準備会への申請のない取材など、当事者への配慮や報道の倫理に欠けると思われる取材が増えてきており、準備会としても対応の強化を検討し進めているところです。マスコミの皆さんには、今その場で熱中症が起こっていることもさることながら、熱中症を起こさないようにするための予防・啓蒙活動に、もっと焦点を当てていただきたいところでもあります。

 南展示棟工事に関連して昨年一年間使用できなかった西2ホールが再び使えるようになり、コミケット91以来の全12ホールでの開催となりましたが、大きく変更したのは会場の使い方です。可能な限り多くのサークルスペースを確保しようとしたコミケット91の西1・3・4ホールに企業ブース、西2ホールのみにサークルを置く西地区の使い方は、西2に配置されたサークルの皆さんに、従来よりもさらに東地区との距離を感じさせてしまいました。こうしたことも含めて全体的な状況を考慮し、この間様々なホール割り案を検討してきました。最終的に今年1年は、従来と同様に東1〜6ホール+西1〜2ホールにサークルを置き、西3〜4ホールと東7ホールに企業ブースを分けて設ける形を取ることになりました。

 サークルは、初日は、ゲーム系とデジタル系中心とした配置。「TYPE-MOON」の勢いは止まらない他「艦これ」の人気も根強いものがありました。2日目は、アニメ系、マンガ系、芸能系が中心。春の映画が大きな話題になったこともあり『名探偵コナン』には何度目かのブームが訪れた他、『ユーリ!!! On ICE』も引き続きの盛り上がりがありました。3日目は男性向、ギャルゲー系、創作少年、評論・情報、鉄道・旅行・メカミリ、その他のジャンルを配置し、相変わらずの混雑となりました。
 一方で、改めてお詫びしなければならないのは、「オリジナル雑貨」ジャンルの配置日の記載ミスです。配置担当と申込書作成担当間の連携に問題があり、本来3日目配置だった「オリジナル雑貨」をサークル参加申込書セットで2日目配置と記載してしまいました。「オリジナル雑貨」の申込全サークルには連絡を行い、日付が変わることで参加できない人には参加不可の申出をしていただきました。今後はこのようなことがないよう確認を強めていきます。

 そして、サークルの皆さんに最も大きな変更となったのは、搬入出に関わるあれこれでした(詳しくは、『コミックマーケット94における宅配便搬出入に関わる変更事項について』参照)。コミックマーケットへの宅配便搬入は通常の業務にはない特殊な作業を行う必要があり、宅配便業者に大きな負荷がかかります。物流業界の厳しい状況もあり、これまで据え置いてきた搬入手数料の現状維持が困難となり、「ゆうパック」側が徴収する搬入手数料を従来の100円から500円に改定することになりました。
 一方で、宅配便搬出が負担になっているという皆さんの声を受けて、サークルスペースに比較的近い場所にクロネコヤマトの荷受け場所を設けたり、ウエストウィング、HakoBookのサービスを導入し、コミックシティさんその他の即売会への荷物の直送が可能になったり、だいしゃの王様による台車の無料貸出サービスを実施したりと、参加者の利便性向上を図りました。これらは概ね好評だったようで、この冬も継続して実施していきます。
 搬入出以外にも、サークル当落やコスプレ先行入場の通知の発送を窓付き封筒にしたり、当日のサークル参加申込書セットの販売時間を閉会後まで延長したりと、様々な改善も行っています。今後とも皆さんがコミックマーケットをより楽しく過ごせるように、引き続き努力をしていきますので、アンケート等でご意見・ご要望をお寄せ下さい。

 企業ブースは、上記の通り会場の両端への配置となったため、往来が大変というご意見もありましたが、大きな混乱はありませんでした。昨夏サークルを配置したときと同様に、東7・8ホールはビッグサイトの他のホールに比べ空調の効きが良く、猛暑の夏コミの中とは思えない快適な環境でした。リコージャパン、京阪カード、セブン銀行といった新しく出展したコンテンツ関係ではない企業のプロモーションもあり、サークル並とはいかないまでも、多様な企業が今回も集まりました。
 東8ホール1・2日目で一年ぶりの開催となった『鈴木心写真館』では、多くの方がプロの写真家による撮影を楽しんでおり、公開された写真を見ると今回もすばらしい笑顔が並んでいます。

 防災公園でコミケットが共催している『有明防災フェア』も5回目となり、「防災」「減災」「応災」活動を行う官庁・企業・団体による様々な展示や、アルファ米やビスケット等の防災食の配布等が行われました。このフェアへはビッグサイトとコスプレのままの行き来ができますが、会場内とは違う広い芝生、ビッグサイトを遠景にできるなどの"映える"環境は、コスプレイヤーの皆さんから好評で、今回もたくさんの人たちで賑わっていました。
 しかし、防災公園に限った話ではありませんが、一部のコスプレイヤーによる行き過ぎた露出は、良くない意味でも話題になってしまっています。繰り返しになりますが、コミケットでは、コスプレを「身体表現」としてとらえ、その表現が可能な限り自由に行えるようにと様々な規制緩和を行ってきました。ですから、自粛や萎縮を招くようなルールを、安易に作ったり増やしたりはしたくありません。コスプレイヤーや撮影者の皆さんには自律的な行動をお願いしますが、故意に衣服をめくるなど過度な露出や羽目を外し過ぎたポーズなどはやめてください。また、コスプレイヤー同士でも声を掛け合ってほしいと思います。

 前回のアフターレポートでも紙幅を割いたスリ・置き引き対策ですが、昨冬に引き続き、この夏もスリの現行犯逮捕がありました。その他、痴漢の現行犯も逮捕されています。コミケットに限ったことではないのですが、多くの人が集まる場所には残念ながら犯罪者もやってきます。当日は多くの警察官の方が巡回し、実際に犯人逮捕に繋がっているわけですが、これも繰り返しとなりますが、参加者ひとりひとりの自衛がまず何よりも大切です。何かに夢中になっている時間が長かったり、逆にくたびれて気が緩んでしまう時もあったりするとは思いますが、ご自身の身の回りには充分注意を払って下さい。

 さて、今回のコミケットで皆さんを一番驚かせたのは、もしかしたら閉会後の反省会での、来年2019年の4日間開催の発表だったかもしれません。東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴う東京ビッグサイトの利用制約期間においては、東展示棟が使用できず大幅に使用可能な面積が減ることになります。それでも多くのサークルが出展できるように、また、混雑時の安全面への配慮のため、コミックマーケット史上初の4日間開催を決断しました。その背景には、2019年夏は山の日の振替休日があり、冬は1日目が土曜日になるといった暦に恵まれたこともあります。
 既に、東京ビッグサイトを会場とする他の同人誌即売会も変則的な日程や通常とは異なる会場使用となっており、オリンピックの影響をまざまざと感じる昨今ですが、2019〜2020年にかけても実現可能な形でこれを乗り切っていくしかないのは、コミケットにおいても変わりありません。先日、この期間は一般参加者の皆さんにリストバンドの購入をお願いすることも発表しましたが、今後とも従来とは異なるやり方で当日の運営をしていかざるを得ないことがいくつもあると思います。参加申込書セット、アピール、カタログはもちろんですが、コミケットの公式WebやTwitterにおけるアナウンスも適宜確認していただくよう、改めてお願いいたします。

 ということで、様々なご心配の声をいただき、いつもながらに色々なことがありはしましたが、この夏は思いのほか平穏無事で終わることができました。準備会からの情報にしっかりと目を通して丹念に準備すること、それでも体調が悪くなりそうだったら動けるうちに帰ることなどに気をつけていただければ、快適とは言いませんが、決して過酷とまでは言えない「場」であると思います。コミケットは全ての参加者の力を合わせて続けていく「場」です。引き続きのご参加とご協力をよろしくお願いします。

(2018年11月26日本文公開)


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[Since: Aug 28 2018] [Last updated: Nov 26 2018]