30周年記念24耐(!?)コミケットスペシャル4 アフターレポート

会場
東京国際展示場東京ビッグサイト)西地区全ホール

会期
2005年3月21日0時〜23時半

サークル数
参加サークル数3,400
申込サークル数3,400
参加企画数95


入場者数
5万人

更衣室登録数
男性女性
6601,270


カタログ発行数
3万部

コミケット公式発行物


その他




ちょっと長目の「コミスペ」アフターレポート

 随分と時間が経ってしまいましたが、コミケットスペシャル4のアフターレポートをお届けしたいと思います。 コミックマーケットが30年目を迎えるにあたって、いつもとは違ったコミケットを東京ビッグサイトで開けないか、 と会場側にスケジュール調整をお願いしたのは、2003年夏頃のことでした。 西地区全ホールとか、東123地区とか、まとまった形で05年春休み頃の休・祝日でという話に、答えがきたのは04年春頃。 24時間ぶっ通しでイベントを開き、サークル入れ替え制で企画やお酒、屋台などお祭り的なものを入れるという枠組は最初から決めていたのですが、 サークルや企画募集、スタッフ間の調整など問題は山積みでしたし、色々と初めてのことで手間どってしまった部分も大きかったイベントでした。 とにかく、参加者を限定してこぢんまりとやろうとした95年、00年のスペシャルと違って、来たい人を全て受け入れる方向でいこうというので、 想定しなければいけないことが多かったことも問題の一つだったのでしょう。
 準備は少しずつ進み、3月頭にはカタログ発行。 何処の書店もいつもの五分の一とか十分の一とかしかカタログを取ってくれず、完全購入制にした割には発行部数は3万部といつもの四分の一でした。 が、何処の書店もあっという間に完売、追加注文を受けたところもありましたし、一時プレミアがついたこともあったようです。 また、参加サークル3,400足らずということもあって、当初の予定より予算を減らすことになってしまいました。 一日分の会場費で二度おいしい形でやることで、参加費などを抑えられるのではと計算して始めたのですが、 夜中の0時に搬入とかレンタルとかいうと二日分の費用が発生したり、深夜帯の人件費などは割り増しといったものが、予想を超え、赤字必至のイベントとなってしまいました。 パネルや電源、ステージなども経費を膨らませてしまったのです。 まあ、それは内部事情ではありますが、いつもと違ったことをやるときは、リサーチし、少し細かく予算や計画を立てなければいけないと改めて考えさせられました。
 ――そして、05年3月20日23時。 鍵の引き渡しのために会場に出かけました。 真夜中近いというのに、既にエントランスプラザには3〜4千人近い人間が集まっていました。 早くもイベントが始まっているような雰囲気です。 20日までの写真関係のイベントの撤収はまだ完全に終わっておらず、駐車場の車も出ていないということで、0時まで待ってくれとのこと。 結局会場は0時には入れたのですが、駐車場は0時50分までコミケ関係者が入れず、スタートが一時間近く遅れてしまいました。 また、来てくれている一般参加者、サークル参加者全員で会場設営を行う予定でしたが、 あまりにも人が多すぎ、全員に手伝ってもらうとかえって混乱するということで、5・6百人だけ設営のために会場に入ってもらうなど、急な変更もありました。 エントランスプラザには、即売会の一般参加者の待機列が早くも出来上がっています。 夜中から来た参加者には、展示やイベントなど西4階のスペースで楽しんでもらって、その後即売会会場に入ってもらおうという予定でしたが、 買い専門の参加者たちは、ただひたすら待つのでありました。
 会場のセッティングが進んでいきます。 机・イスなどは、あっという間に並べ終わったのですが、電源やパネル、ステージ、企画搬入など思った以上に時間がかかりました。 今回総本部はアトリウムに作り、金屏風に畳、赤ブーブー通信社、コミックレヴォリューション、会場から頂いたお祝いの花を飾りました。 駐車場の屋台村は、早くも営業を始めています。 夜中なのに、ワイワイガヤガヤと、闇市のような空間が作られていき、結構ワクワクさせられます。 あちこちに怪しげな企画が立ち上がり、少しずつ形が整っていきます。
 出来次第開場ということで3時頃が予定されていたのですが、結局4時、西4階はオープンしました。 ぼくは、今回は「大代表」ということで、総本部に縛られず、あちこちに参加し、できるだけサークルや一般の人と話したりしようと考えていました。 4時から6時までは、マニアのフリーマーケット『東京マニアックス』の自スペースで怪しい古本売りを行っていました。 まあ、イスに座っていてもいろんな人がやってきてくれるので、それも面白かったようです。 西4階にはみんなが予想した以上に沢山の人が入ってきています。 射的やクジ引、Nゲージやプラレール、ビッグサイトのレプリカにはコミケットの参加者のフィギュアなどが所狭しと並んでいますし、 生ギターによるアニメソング合唱には人がきれません。 SF大会のパネル展示、海外同人誌コーナーも人が沢山いましたし、ビエンナーレ・コミケット30年展示も参加者が熱心に見てくれています。 薄暗いガレージ空間の中に、手作りの思い思いの展示や企画が散乱し、多くの人がそこをウロウロとしている光景は、案外、幸せなものに見えます。 もっとも、6時頃には、あちこちの畳スペースに転がったり、座ったりする人も出てきていました。 少しずつ夜が明けてきています。 まだ完全に始まりきっていないのに、早くも疲れてしまったのかと、ちょっと心配です。 メイド喫茶やスープバーなどに座り込んでいる人も増えていました。
 朝8時、西1階への第1部の入場開始です。 アトリウムに列を入れ、流していきます。 カタログ完全購入制ということで、参加者はカタログをかざし、一斉に入っていきます。 列のできるサークルに向かって走る人もいますが、いつもより殺気立ってはいないようです。 即売会ブースの中にも様々な企画が混在していますし、原画展なども行われています。 ダーツバーなどもスタートしています。会場内は見て回れるぐらいの混雑です。 女性サークルメインの第1部ですが、一般参加者に男性が多いこともあって、一部に集中していた感はありましたが、おおむねよかったようです。
 今回企画に開放した西2階の小部屋では、原画展示、ミニFM局を始め、各企画が始まっています。 ちょっと入りづらいかなとも思っていたのですが、ひっきりなしに人が訪れているようで、吾妻ひでお原画展なども終始混雑していました。 個人的には吾妻ひでお復活の気配を感じたのですが、間違ってはいなかったようです。 また、当日はたまたまぼくの誕生日にあたっていたこともあって、あちこちでケーキで祝っていただきました。 その折はありがとうございました。
 13時第1部終了。この時点で既に外売りのカタログは完売、準備会企画で出した「コミケ汁」ことコミケのおいしい水(ただの秩父の水)、 トートバッグなどもほとんど売れてしまい、コミケット30年記念資料集「コミックマーケット30'sファイル」は販売中。 ぼくは、小部屋企画で話をしたりして、午後を迎えています。 ――ここから初めての試みであるサークル入れ替えです。一般参加者も一度西1階会場を出てもらうことになります。 西地区だけで人をさばく計画だったこともあって、列をテトリス状態であちこちにためていきます。 西4階では、ステージのコンサートも始まっていました。一部は4階の企画に、そして一部はエントランスプラザにできた列に並びに行きます。 屋台なども混雑していますし、女装テラスバー、同人レトロバーなども人がいっぱいです。 が、なんとか入れ替えもそれなりにスムーズに行われたようです。
 16時第2部入場開始。カタログ売り切れのためフリー入場なのですが、列は整然と流れ込んでいきます。 人気サークルの混雑はかなりだったようですが、西1階に入りきったようで、入場制限までかけるには至りませんでした。 というのは、イベントそのもの、コミケットスペシャルそのものを楽しもうとする姿勢で来てくれた人が予想以上に多く、 今回は本を売る・買う以外の楽しみを見つけようとしてくれたことが大きかったと思います。 誰でも参加できる、拡声器で叫ぶ「青年の主張」、誰でもひっくり返せる「ちゃぶ台返し」などがかなりの人気でした。 左翼趣味者同盟のアジやデモ・パフォーマンス、バンドライブなどにも多くの参加者がいて、まんべんなく楽しまれていたようです。 甲冑バトルなど普段はなかなか見られない企画も多く、プレゼンとしても成功だったのではないでしょうか?
 ぼくは、夕方くらいからあちこちの企画に呼ばれていました。 女装コスプレコンテスト、夜のコスプレクイーンコンテスト、トークショー、メイドお誕生会、SAN-YOライブなどなどです。 しかし、いつもにまして女装コスプレの多いイベントだったようです。 パフォーマンスや長モノをOKしてあったこともあって派手にも見えました。 また、18時半からは、ベネチア・ビエンナーレ日本館コミッショナー森川嘉一郎氏を招いてのトークショー。 いろいろ興味深い話を聞けて観客も多かったようです。 コミケットの展示の方は、ツアーガイド方式で見てくれていましたし、トークショーも熱心に聞いてくれるなど、 コミケットそのものに興味を持ってくれている参加者の多さは、 今回のスペシャルが、いわば、コミケットのコアな層による、互いの意識の確認という意味合いも持っていたような気がします。 半分眠いのかもしれませんが、宗教的法悦にも近い幸福そうなボーとした表情の人たちがゾンビのようにウロウロしている光景は、別の意味で興味深いものでした。 イベントの作り出す空間の魔力。 疲れによる躁の状態。それはラストに向けて走り出します。
 ステージでSAN-YOライブ始まったのは19時半頃。 元々準備会スタッフ向けのパフォーマンスライブなのですが、一般も混じってノリノリです。 1階の方は一段落し、あちこちでアルコールもたしなまれ、旧交を暖める人たち、座り込む人たちなども出てきています。 企画の後片付けも少しずつ始まりました。
 21時、スペシャル終了。――家に帰るまでがコミケットです。さっさと撤収です。 一般の手伝いの人も多く、机・イスなどはあっという間に片付いていきます。 ただ、プロの手が入らないといけない撤収には少し時間がかかったようです。 あらかた終了したのは、22時半。アトリウムには反省会があるだろうと多くの人が残っています。 ――が、ぼくにもあまり体力は残されていません。とりあえず、お疲れさん、で解散だ。というわけでのあいさつ。 心地良い疲労、アルコールの入った上気した顔、何事もなく終わったという安堵感。そうして、ありがとう。
今回、当日の代表を、東456地区本部長筆谷芳行君と館内担当総統活の市川孝一君に頼み、務めてもらいました。 総本部に座って当日の運営を取りしきってくれ、当日「大代表」はあちこち遊ぶことが出来、幸せでした。 なお、事務関係を取り仕切ってくれた里見直紀君もご苦労様でした。 三人からの弁をここでご紹介したいと思います。

【筆谷芳行より】
 正直ここまで盛り上がるイベントになるとは考えられなかった。 参加者の方々にとって、やはり「コミケ」の存在は別格なのだな…と、再確認できました。 コミケって、同人誌即売会としての機能が大きいのはもちろんだけど、精神的な支えとしての存在…「実家」みたいなモノなのか?  「祭」なのに参加の仕方が裏方だったのが残念。サークルの方々の酔っ払いぶりを後日聞くたびにうらやましく思う。スタッフはお酒楽しめないし…。
 スタッフとしては、通常コミケで出会いにくい他部署の人々と同じ仕事に関われておもしろかった。 今後の風通しが良くなりそう。終わってみればやれやれだけど、立ち上がりの頃の不安は大きかった。 「学園祭」って盛り上がるのか? 杞憂でした。 …企画・サークルの方々、そして自分で楽しみを見つけ出す事にたけていた参加者の方々。 皆の思いがコミケをいつまでも変わらぬ姿で存続させていくのだなと確信しました。ありがとう。
 追記・一番おもしろかった当日のシーン。疲れ始めた参加者の中をシュコーンシュコーンと元気よく走り続けるミニ四駆。

【市川孝一より】
 有明、東京ビックサイトにコミケットが移ってかれこれ10年が過ぎました。 コミケットはビックサイトで試行錯誤してきた10年でした。 今回のスペシャル4ではビックサイトでどんな事が出来るか? 24時間やれるか? などを考えて始まり、 どこまでビックサイトに怒られずにやることが出来、それを通常のコミケットに反映していけるかなどを踏まえたうえで今回のスペシャルという実験を行いました。
 思い切った実験ではありましたがスタッフもアレヤコレヤ、通常とは違う作業にてんてこ舞いしながら話を進め、当日を迎えました。 結果、最近のコミケットでは絶対にあり得なかった異様な盛り上がりを見せました、小部屋企画で集い賑あう人々、 屋外展示場のケータリングに列び、食する人、4階企画のメイド喫茶、マニアックスでの古物販売、 ビエンナーレ展示にステージでのバンド演奏や出し物、様々な企画、アトリウムまでも一体感があり、 祭りや文化祭のような「ハレの日」を感じるコミケットスペシャルが完成しました。
 また今回のスペシャルには飲酒もあり、24時間ぶっ続けでの体力の限界、1部・2部のサークル入れ替え、 当日まで懸念されていた事柄がいくつもありましたが、泥酔で倒れて救急車で運ばれる事もなく、 倒れて家に帰れない人も出ず、入れ替えも無事に済み、たいした怪我人もなく無事に終了する事が出来ました。 参加されたサークル参加者、一般参加者にスタッフの方々に感謝致します。

【里見直紀より】
 Webでのプログレスレポートでは飄々とした書きぶりをしていましたが、正直準備が間に合うのか? とハラハラだったのが昨秋〜1月の状況でした。 申し込み受付やその処理は、去年の内の作業でしたが、やはり、冬のコミケットが終わらないと準備会としてのスペシャルの本格稼働は難しかったです。 しかも、今回は企画がらみで通常のコミケットとはだいぶ違った作業もありましたし。 おかげで、年明けは正月から大突貫工事の日々が続きました。巻き込まれたスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。
 当日は、イベントそのものが立ち上がるまではいろいろとトラブルもありましたが、立ち上がってからは、拍子抜けするほど順調に過ぎていったような気がします。 そして、ここまで盛り上がって、ここまで皆さんに楽しんでいただけるとは思っていませんでした。 これも、様々な企画を考えてくれた、サークル・企画参加・各セクションのスタッフのご協力があればこそです。
 今回、コミケットとしては珍しくWebを活用してみました。 プログレスレポート、参加サークル・企画の全リスト公開、各企画へのリンクページ……。 いかがだったでしょうか?これからも、情報発信手段としてはWebをいろいろ使っていこうと思っています。
 とはいうものの、ネット全盛の世の中ですが、リアルなイベントであればこそスペシャルという企画は成立し得たわけで、 その意味でもコミケットという「場」を自ら再認識したしだいです。

 お疲れさんでした。 その他、今回のプロジェクトに関わり、いろいろと大変なことをしてくれた準備会スタッフの皆さん、サークル・企画参加者・一般の方もお疲れ様でした。
 終了後、何人もの人に言われました。文化祭みたいで楽しかった。昔のコミケみたいですね。 ――一年に一回ぐらいこんなのやってください。いあ、もう同じことはできません。ぼくに残されている体力にも限りがあります。そう答えました。 その後、いろんなところでコミケットスペシャルについて語られていますが、楽しかったという声が多いようです。 本音を言うなら、だったら、自分でそうしたものを立ち上げてもらいたいと思います。 フリーな立場で参加するのが楽しいイベントなら、ぼくもそういう立場で参加してみたいからです。
 2010年にはまったく違った形でのスペシャルを考えています。参加者の方たちにまた、そこで会えたらうれしいと思います。
 準備会は、現在夏コミに向けて鋭意努力中。当然ながら通常のコミケットですが、同様のご協力、お願いしたいと思います。
(2005年5月 米沢嘉博)

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