「児童ポルノ禁止法案」に対する意見表明

2013年5月29日
コミックマーケット準備会・共同代表
安田かほる・筆谷芳行・市川孝一

 私たちコミックマーケット準備会は、全国同人誌即売会連絡会による『「児童ポルノ禁止法」改訂案への反対声明』に全面的に賛同いたします。
 また、日本漫画家協会様の声明、日本雑誌協会様日本書籍出版協会様声明(PDF)、いずれに対しても強い支持を表明いたします。
 そして私たちは同時に、現実に被害者が存在する児童虐待、児童の性的搾取に立ち向かう取り組みを支持することを表明いたします。

 今回の法案において、私たちが危惧するのは「政府は、児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、擬似児童ポルノ等を言う。)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進する」という附則の存在です。

 日本は、世界最大のマンガ文化が花開く豊饒の地です。一方で、世界に冠たる傑作、名作の影には、数多くの知られることなく消えていく作品があります。
 コミックマーケットにおいては、一回の開催で約三万五千サークルが参加し、七万種類を越える作品が生まれ、五十万人がそれらの作品を求めて集まります。そしてその中には現行法の範囲内ではありますが、良識ある人たちが眉を顰めるような傾向の内容を持つ作品が含まれていることも事実です。
 しかし、名だたる映画監督のデビュー作が性的な作品であることが珍しくないように、その中には多くの原石が存在しています。人気マンガ家もまた、デビュー作が性的な作品である方が少なくありません。無数の才能の中から輝きを放った作品が傑作として評価されるためには、創作上の、発想と発表の自由が必要なのです。才能に枷をはめる事は、名作が生まれる可能性の芽を摘むことになりはしないかと不安を感じざるを得ません。

 私たちはファンの立場でマンガやアニメ、ゲームを守っていきたいと考えています。
 多くの先人の努力の上に生まれた素晴らしいコンテンツを楽しみ、表現の多様性を模索する作家の皆さんの才能に尊敬を抱いて、新たな作品を心待ちにしています。
 諸外国に誇れるコンテンツ文化の世界は、作家の自由な活動によって生まれてきました。やっと育った文化の種を、今、狭い檻に閉じ込めてしまってよいのでしょうか。

 自由な創作活動から生まれる発想は、時に感情的な衝突を生むこともあるでしょう。
 そのような時に必要なことは、創作や発想自体を法で縛ることでなく、相互の価値観を理解し共存することを認めるため、対話を重ねることだと考えます。
 対話を通じ、多様な価値観に寛容な社会を実現することが、本法案の立法趣旨である「児童の福祉と安全」を促進する最良の道ではないでしょうか。

 以上のことから私たちは、本法案に反対の意思を表明致します。

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