コミックマーケット78アフターレポート

会場
東京国際展示場東京ビッグサイト)全館

会期
2010年8月13日(金)〜15日(日)

サークル数
参加サークル数3万5千
申込サークル数5万3千


入場者数
13日(金)17万人
14日(土)19万人
15日(日)20万人


更衣室登録数
 男性女性
13日(金)1,0384,548
14日(土)1,8385,680
15日(日)1,3732,302


コミケット公式発行物


マスコミ取材
 コミックマーケット78取材申込一覧



 記録的な猛暑となったこの夏、我々準備会も懸念し、会場側からも警察・消防からも心配をいただいたのが、熱中症への対策でした。今回からメインの一般参加者待機場となった東駐車場には、多くのケータリングカーを配置して水分補給を切らさないようにしたり、普段は救護室には使っていない控室を傷病者の休息スペースに転用できるよう準備をしたりと、可能な限りの準備をしたのですが……。幸いにも、直前に台風が東京に近づきかつそれたことのせいか、奇跡的に初日と2日目が曇りという絶妙な天気に恵まれ、3日目は晴れはしたものの、それまでの酷暑日ほどには気温は上がりませんでした。参加者の皆さんも、しっかりと熱中症対策を準備した上で来場されていたようで、救護室に搬送された人数は、事前の悲劇的な予想を大幅に下回ることになりました。天候運には比較的恵まれているコミケットの中でも、記憶に残る当日になったのではないかと思います。

 そんな中、入場者数は過去最高となったコミケット76と同じく56万人を記録しました。1日目は、主にアニメ系・ゲーム系・芸能系が中心で、『ヘタリア』『イナズマイレブン』に人気が集まりました。2日目は同人ソフト系、ジャンプ系、マンガFC系等です。『東方Project』は混雑対策として、3日目の男性向対応と同じく、外周向の1ブロックを削りました。このため、かなりの混雑緩和を実現できましたが、局所的には相変わらず身動きできないような人混みとなりました。女性向では『デュラララ!!』が大人気。ただ、この夏のコミケットには申込が間に合わなかったサークルも多く、他ジャンルの中での新刊が目につきました。この日は、4年ぶりに東京湾大華火祭と開催が重なり、花火大会への来場者とコミケからの帰宅者のバッティングによる混乱が少々心配されたのですが、ふたを開けてみると、コミケ参加者のりんかい線の利用がすっかり定着していることもあって、ほとんど問題はありませんでした。3日目は、創作系・男性向・ギャルゲー系その他の配置で、毎回ながらの混みようでした。ここ最近はアニメーターの方々のサークル参加が目立っており、この日もそうしたサークルに関わる混雑が激しかったようです。

 ご存じの通り東京ビッグサイトでは、昨年から大規模改修工事が始まっています。今夏は会議棟7Fがコミケットの期間中借りることができず、ここ2回行われていたステージイベントはできませんでした(ちなみに冬も使えません)。これに限らず、今後とも工事の足組が残っていたり、使えるところが使えなかったり、通れるところが通れなかったりといった不便が今しばらくの間続きますので、参加者の皆さんには理解のほどよろしくお願いします。
 この改修工事とは別に、これまでの東駐車場の外側を埋め立て拡張した土地が整備され、5月から東駐車場の面積が約4倍に拡大しました。今までの一般参加者待機列は、イーストプロムナード、センタープロムナードを伸びて、ピーク時は夢の大橋付近まで達していたため、公園の管理団体や周囲の施設、オフィスビルへの配慮も大変でしたが、今後は、この東駐車場がメインの待機列を収容する場所となります。どの駅からも遠く、日陰もなく吹きさらしと、夏・冬いずれも相当過酷な環境ですので、一般参加者の方は十分な準備の上来場してください。
 こうした会場問題以外で、昨年からの重要な継続課題と認識しているのは、コスプレCD-ROMの中に、未だに露出の多い写真集が見受けられるということです。前回は見本誌確認に時間が掛かり、一部のサークルにはご迷惑をおかけしたこともあって、今回は準備会内の確認体制を大幅に強化し、迅速な対応を心がけました。再三申し上げているとおり、コスプレCD-ROM等の実写作品やフルカラー同人誌のリアルな描写については、性器の一部の露骨な描写であっても、ワイセツ図画に該当する恐れがあります。この見本誌確認の結果ですが、今回も多くのCD-ROMを販売停止にせざるを得ませんでした。コミケットは表現の自由を最大限守っていく立場にはありますが、法律に抵触しないことが前提となります。大変悲しいことですが、このまま状況が改善しないのであれば、準備会としてより厳しい対応を取らざるを得なくなります。自分たちで自分たちの首を絞めるようなことはしないでいただきたいと、改めて強くお願いする次第です。

 そして、コミケットへのマスコミの熱い視線は相変わらずです。この夏もテレビ局の取材が複数ありました。特にNHKの取材が目立ち、ニュース以外にもNHK-BSの番組『MAG・ネット』等、複数のクルーがそれぞれの目的で取材を行っていました。1日目の14時のニュース、さらに『ニュースウオッチ9』で取り上げられたこともあり、その放送を見て翌日、同人誌即売会をよくわからないままに、コミケットに来てしまった人もいたようです。日本テレビは『ズームイン!!SUPER』、テレビ東京は『アド街ック天国』の秋葉原特集の一環として、テレビ朝日は東京スカイツリーを扱っているサークルの密着取材、他にもTBS、BSフジ、スカパー、放送大学のカメラ取材が入りました。
 雑誌メディアでは、コミケット参加者のファッションを取材したいという目的で、ファッション誌の来訪が増えています。かつては考えられないことでしたが、ゴスロリやメイドファッションが海外からも注目を集める現在、様々な眼差しがコミケットには向けられています。
 一方で問題となったのは、ニコニコ生放送に代表される個人のストリーム系の撮影です。コミケットは、撮影を禁止していませんし、個人の非営利(趣味や学術等)の目的での撮影・録画・取材には取材者登録を求めてもいません。しかし、上記のストリーム系の撮影を中心に、無断撮影・無断公開などのトラブルの報告も増えてきています。撮影したものを被写体の許可をとらないでネットやメディアで公開した場合、問題になることもあります。いつでもどこでも撮影ができるわけではなく、場所・時間帯・状況によって撮影ができなかったり、制約されている事もありますし、周囲の方々に撮影をしていることがわからない形での撮影、盗撮はこれを禁止しています。また、人混みの遠景ではなく、被写体となる個人が識別できるような撮影やインタビューには、事前に被写体に対して、身分・目的を明かした上での説明を行い、了解を得るように呼びかけています(詳しくは、コミケットカタログの諸注意ページや、「個人による非営利の撮影・録画について」を参照)。
 こうした取材を受け入れるだけでなく、コミケットの現在を自ら把握し、それを正しく世の中に伝えていくことも重要であると、我々準備会は考えています。2004年のコミケット66に九州大学と共同で実施した「30周年記念調査」に続き、このコミケット78をターゲットとして、東京工業大学を中心とする複数の大学の研究者からなる「コンテンツ研究チーム」と共同で「35周年記念調査」を実施しました。サークルの皆さんには、申込時にアンケートに答えていただき、準備会スタッフにも事前の拡大準備集会において回答をしてもらいました。夏の当日は、西2ホールと東4ホールに専用窓口の設置、カタログへの質問用紙の掲載、ネット上でのアンケート用サイトの開設をすることで、一般参加者向けのアンケートを実施し、約5000人の方々の回答を得ることができました。皆さんありがとうございました。これらの回答は個人が特定されない形で統計処理されます。現在、アンケートの集計・分析作業中ですが、その結果については、学術的に利用される他、カタログ紙上でも発表する予定です。コミケットの参加者の変化については、このような形で継続的に記録を残していきたいと考えています。
 コミケットの現在という意味では、昨秋にオープンした米沢嘉博記念図書館において、1月中旬から5月中旬まで昨冬のコミケット77の見本誌の閲覧提供を行いました。見本誌閲覧は事前登録制で1回の閲覧が5冊までと制限されていたため不便なところがありましたが、多くの方にご来館いただきました。8月末から11月上旬までのコミケット78の見本誌閲覧においては、初回の反省を生かして、来館当日の閲覧申請も受け付け、利便性を高めてもいます。今後もコミケット開催毎に見本誌の閲覧提供を行っていきますが、皆さんからの利用に関するご意見をいただけると幸いです。ちなみに、見本誌閲覧だけでなく、10月1日から2011年1月末まで、「コミックマーケットの源流」展が開かれています。初代コミケット代表である原田央男(霜月たかなか)さん監修の元、原田さんの所有資料や図書館、コミケットの資料も組み合わせ、コミケット開催前から創生期をたどる展示となっています。この機会を活用して、米沢嘉博記念図書館にも是非足を運んでいただけたらと思います。詳細は図書館公式サイトをご覧ください。

 最後に、当日のエピソードをいくつか。現在、ネットの世界で大きな話題となっているTwitterですが、今回のコミケットで最も話題になったのは、ソフトバンクの孫正義社長の「佃君、対応頼む」のつぶやきだったでしょう。ご存じの通りコミケット当日は、大概の携帯電話がつながりにくいわけですが、電波の増強を何気なく期待したつぶやきを受けての孫社長から部下への指示が上記のツイートというわけです。当然のごとく、この発言の翌日には、ソフトバンクモバイルからの相談が、コミケットに来ました。アンテナ車が当日やって来たり、ソフトバンクモバイルの社員7人がルーターを担いで会場で人間アンテナになったりと、様々な対応の結果、今回のソフトバンクの携帯電話は今までよりはつながりやすかったようです。NTTドコモは以前からアンテナ車を含めいろいろな増強対策を行っていると聞いていますし、これまで既存施設の増強は行っていたKDDIも、この夏のソフトバンクモバイルの動きに刺激されたのか、ついにアンテナ車が会場にやってきます。この冬は大手携帯会社3社のアンテナ車すべてを有明で見ることができそうです。
 また、1日目にある企業が、宣伝用の飛行船をビッグサイト上空に飛ばしたことも話題になりました。全長17mもあるシロモノだったようですが、空の上では思いのほか大きく見えず、広告・宣伝効果は今ひとつだったように思われます。法令やコミケットのルールを守り、参加者や周辺の方々の迷惑にならない限りにおいては、新しい試みにチャレンジしていただきたいとは思います。しかし、この飛行船については、準備会に対して事前にそもそもの話が通っていなかったのが問題で、その点については厳重に申し入れをしました。

 夏から冬へは期間も短く実質4ケ月間ちょっと。既に当落通知もサークルの皆さんに送付され、冬に向けての作品の準備真っ盛りかと思いますし、準備会の準備作業も慌ただしさを増しています。繰り返しとなりますが、この冬も無事にコミケットが開催されるためにも、参加者皆さんの協力をよろしくお願いします。
(2010年11月15日)

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